【不定期連載】かごしまお魚再発見

クマエビ

大富先生(鹿児島大学水産学部)に、鹿児島のお魚のことを教えてもらえるこのコーナー。
今回は、八代海でとられる、伝統的な食材となるエビをご紹介!

風の力で網をひく伝統漁業 狙うは鹿児島の正月の主役

 今年の秋は東日本を中心に人がクマにおそわれる被害が多かったですね。とても残念なことです。好物のドングリなどの不作に加え、クマの生息数の増加や分布域の拡大なども考えられるという見方もあるようですね。難しい問題ですが、今後は少しでも被害件数が減ることを願うばかりです。
 さて、ちょうどクマが冬眠に入るころ、海では“クマ”の漁が最盛期をむかえます。そして、伝統的な食材が作られるのです。とられるのはクマエビ。舞台は八代海です。クルマエビに比べるとやや地味な色合いのエビですが、あしが赤いので「あしあかえび」とも呼ばれています。11月から3月にかけて、船に大きな帆をはって風の力で網をひく「けた打たせ網」という伝統的な漁法でとられます。

伝統的な漁法「けた打たせ漁」

焼きえびでお雑煮はいかがですか?

 水揚げされたクマエビは、これまた伝統的な製法で焼きえびにされます。丹念に炭火で焼き上げ、寒風にさらします。以前はたくさん作られていましたが、今ではとる漁師さんの数も激減し、焼きえび製造は鹿児島県内では出水市の柴田水産さん一軒になりました。エビ資源の増減も気になりますが、私はとる人や作る人の減少がとても気になります。少し安価な県外産の焼きえびや、最近では外国産のものまで出回っていますが、今シーズンは地元出水産の焼きえびでお雑煮を作ってみてはいかがですか? クマエビは、もちろん刺身や塩焼きなどでもおいしくいただけますよ。

クマエビの刺身
焼きえびの雑煮

クマエビ
 インド-太平洋の沿岸の、あたたかい海に広く分布する十脚目クルマエビ科のエビで、体長が20cmを超えるものもいます。日本には、日本海側では富山県よりも南、太平洋側では千葉県よりも南にすんでいます。知名度はクルマエビにはかないませんが、年に1回だけこのエビが主役の料理になる地域があります。それが鹿児島です。

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